住宅を断熱する方法として、「充填断熱工法」と「外張断熱工法」の2つに大別できます。
充填断熱工法

柱などの構造材の間にボード状又はシート状の断熱材を入れたり、液状の断熱材を吹込み充填する方法です。
現在でも木造住宅において広く用いられている工法です。
壁の内側の空間を利用するため、支持材などで新たに断熱用のスペースをつくる必要がなく、比較的低コストで施工できる特徴があります。
外張断熱工法

柱などの構造材の外側に断熱材を張り付けていき、建物を覆う工法です。
主に発泡プラスチック系断熱材が用いられ、壁内が空洞になるため配線や配管などのダクトスペースが確保しやすくなるなどメリットがあります。
しかし、外壁と外装材(サイディングなど)の間に断熱材があるので、外装材の重みで外装材が垂れ下がる恐れがあることから断熱材をあまり厚くできない点、風圧などによる外装材のゆるみ、また地震などにより変形しやすいなどのデメリットもあります。
また、外側に断熱を行うため施工工程が増えて、充填断熱に比べるとコストが高くなります。
充填断熱と外張断熱のメリットとデメリット

充填と外張、どちらを選ぶ?
充填断熱にするか外張断熱にするかは、施工性やコスト、さまざまな断熱材の中からどれを選ぶかにも関わり、適材適所で考えることが大切です。
壁には充填断熱を採用し、基礎や屋根には外張断熱を採用するなど、住宅の部位によって使い分けるケースもあります。
断熱工法の組み合わせも可能
グラスウール断熱材で充填断熱したうえで、さらに外張断熱を付加して断熱性能を高める「付加断熱」という選択肢もあります。
「充填断熱」+「外張り断熱」のほか、室内側に付加する「充填断熱」+「内張断熱」もあります。

充填断熱工法のメリット
1. 壁の中のスペースを有効利用でき、敷地を広く使える
充填断熱は柱などの間に断熱材を充填するため、断熱材用のスペースを新たに設ける必要がなく、敷地面積に影響を与えません。
一方、外張断熱では外装材の間に断熱材を固定するため、断熱材の分だけ外壁の厚みが増やすことになり、その分敷地が狭くなってしまいます。
2. 火災時に火が回りにくい
充填断熱工法で使用されるのは、グラスウールをはじめとする「火に強い断熱材」です。
断熱材が、万一の火災時には壁の中に火流が走るのを防ぎ、燃えにくいため延焼を遅らせる役割を果たします。
一方、外張断熱で主に使用される発泡プラスチック系の断熱材は可燃性のものがあり、また有害なガスを発生するものもあります。

3. 低コストで施工できる
充填断熱に使用されるグラスウール等の繊維系断熱材は、断熱材自体が安価なため、比較的安価に施工ができます。
コストパフォーマンスの優れた素材を用いることで、断熱工事全体にかかる費用を抑えることができます。
一方、外張断熱は建物の外側に断熱施工をするため施工工程が多くなり、また住宅の形状により施工の手間が左右され、形状が複雑なほど施工が難しくなり施工コストもそのぶん膨らみます。


充填断熱工法の信頼できる性能と実績
1. 寒さの厳しい北欧で選ばれる工法

木造住宅では、綿密な計画に基づくしっかりとした施工がされれば、充填断熱でも外張り断熱でも「冬暖かく、夏涼しく」という目的は果たせます。
しかし、日本よりはるかに冬の寒さが厳しいスウェーデンなどの北欧において、住宅の断熱工法はグラスウール断熱材による充填断熱工法が一般的となっており、その優れた断熱性能が実証されています。
2. 日本の住宅における断熱の王道
一般的な住宅建築である「木造軸組工法(在来工法)」は、日本で古くから用いられてきた伝統的な建築方法です。
充填断熱工法は、その在来工法に適した断熱方法として早くから発達し、現在も主流となっています。
多くの建築家たちに選ばれ続けてきた信頼ある工法です。