Case Study

高断熱リノベーション事例:滝沢市古川邸

築45年のほぼ無断熱のご自宅を、断熱気密の伝道師が高断熱リノベーションで高性能住宅に生まれ変わらせました。

こだわりのポイント
『既存の建材を活かして環境への負荷とコストを抑えてリノベーション』
・建物は平屋のまま、屋根も既存住宅に合わせた勾配に
・既存の柱をできるだけ残し、取り換えのコスト・工数を削減
・次の世代のリノベーションを意識して、廃棄が少ない素材選び

何より、資産として次世代に残していけるような家づくりをしていく必要があると思っています。
断熱材によっては施工時に木材とくっついて剥すことができない素材もありますが、その場合次のリノベーションでは、木材を活用することができなくなり、また分離できないと産廃としても引き取ってもらえないなど、デメリットが大きいのです。廃棄時のコストも高くなってしまいます。
資源の有効活用ができないのは、環境にとってもコスト面でも良くないですよね。そのような考えもあり、今回は多くの部分で長期的に性能が安定していて、使い慣れているグラスウールを使用しました。 

工事期間・工事面積・費用
▶工事期間:4か月
▶工事面積:80.326㎡
▶費用:2,400万円

活用した補助金
「住まいの省エネルギー改修推進事業費補助金」(いわてZEH+住宅等普及促進事業費のうち改修向け)

 

仕様構成図・各仕様データ

仕様構成図

建物データ

所在地 岩手県滝沢市
工法・規模 木造軸組み
延床面積 80.326m2
竣工 2024年4月
設計 住まい環境プランニング合同会社
施工

 

性能データ

1次エネルギー消費量(年間) 715 MJ/㎡.a
暖房負荷(年間)
冷房負荷(年間)
熱損失係数(Q値)
外皮平均熱貫流率(Ua値) 0.23 W/m2・K
相当隙間面積(C値)

 

断熱仕様

  施工前 施工後
屋根

グラスウール 15mm程度

充填:イゾベール・コンフォート※ 高性能16K120mm×2層
付加:硬質ウレタンボード 61mm
外壁

無し

充填:イゾベール・コンフォート※ 高性能16K105mm
付加:硬質ウレタンボード  61mm
無し 充填:イゾベール・コンフォート※ 高性能16K105mm
付加:硬質ウレタンフォーム 100mm・フェノールフォーム 100mm
基礎

無し

押出法ポリスチレンフォーム b3種 50mm

アルミサッシ 単板ガラス

樹脂サッシ トリプル硝子
防湿気密シート

無し

イゾベール・バリオ エクストラセーフ※
換気 第三種換気

※マグ・イゾベールの可変透湿気密シートです。

設計・施工者より

住まい環境プランニング合同会社 代表社員 古川繫宏氏

古川繫宏氏
「国内唯一の高気密性能を担保できる気密施工マイスターを育成する設計事務所」
として、北の地”盛岡”から理論と実体験に基づいて
省エネ住宅の研究開発、普及、技術支援を実施。

【断熱リノベーションを選んだ理由】
正直、息子から「それがお父さんの仕事なんでしょ?」と言われたのが一番の動機です。
建築史家藤本さんも言っていましたが、建築はただ住む場所ではなく、想い出など住んでいた人のアイデンティティに関連しています。「ここに住み続けたい」と言ってくれた息子のためにも、同じ敷地で、リノベーションに挑戦することを決めました。

【断熱リノベーションのメリット】
生まれ育った土地に愛着をもってくれ、そのまま引き継いで住みたいという子の世代に良質な住宅を残せること。これは新築にないメリットだと思います。
既存の素材を活かすことができれば、新築に比べてコストを抑えることができます。 また、建築時のコストだけでなく、ランニングコストも抑えることができます。 

これは物件にもよりますが、今回の場合、減築することもあり、建築指導課と協議・確認し確認申請はしなくても良いことになり、結果固定資産税もこれまでのままの額です。ランニングコストの面でいうと、暖冷房費だけでなく税金も抑えることができました。

【断熱リノベーションの想定内・想定外だったこと】 
想定内だったことは、実際にすんでいた物件だったので、床下・基礎部分の状況や、小屋裏に入って図面通りに柱が配置されているかなどを施工前に調査することができました。想定外だったことは、梁の捻じれや柱の腐食などで、それを直したり取り換えたりするコストも同様に想定外でした。

柱の補強



【断熱リノベーションに向いている物件】
断熱リノベーションに適している物件かどうかは床下に潜って、壁を剥すまでは分かりませんので、確認できない条件では賭けのようなところがあります。地盤調査、可能であれば内見、床下などの確認ができる物件で昭和56年以降の建物が構造的にはお勧めです。日照の入り方が適切で、痛みの少ない物件を選ぶことも大切になります。 

【断熱リノベーションを実施する上で必要なスキル】
断熱・気密の理論的な基礎が分かっていることが大前提です。ただ決められているから施工するのではなく、なぜ必要なのか、正しく施工しないことによってどのようなことが発生するかを想定できる知識が必要になります。新築の場合は現場の状況が計算できるので決められた通りに施工すれば大きな問題になりませんが、リノベーションの場合は物件により状況がさまざまであるため、何故必要か、どうすべきかなどケースバイケースで対応策を考えるスキルと経験が必要になります。

【断熱リノベーションを終えてのご家族の反応】
今回の自宅をリノベーションするにあたって設定したテーマは「暮らしを楽にする断熱リノベーション」。本当のテーマは、「妻や子供が家に不満の無いようにする」です。高性能住宅に携わる仕事に従事し、全国に普及させるを使命にしているからこそ、ただ単に断熱を増す・気密性能を良くする以外にも検討するべき点は多々あります。
家は、安全に暮らせて不快感が無くメンテナンスも容易にできる事で、本来の目的となります。自宅のリノベーションを通じて家族に体感してもらい、一番厳しい家族の意見を今後の仕事に役立てる事が出来る事も私の狙いでもありました。

窓辺のビフォーアフター

 断熱性能もさることながら、家族が驚いていたのはその静けさとグラスウールならではの柔らかな感触。床には根太部分にグラスウールを採用しているのですが、踏んだ時に他の断熱材にはない心地よさがあります。 

家族のためにこだわった点は、メンテナンスがしやすいようにできるだけシンプルにすることです。換気システムはフィルター交換の頻度と費用を考えあえて第三種換気システムを採用し、オール電化にしたことで光熱費を電気代だけで、補修依頼先もひとつに集約、管理できるようにしました。また窓のメーカーは1つに絞り、妻が一人でもメンテナンスに困らないようにする配慮しました。5月の電気料金をみて、妻から「…この家、すごいね」と言われたのは、なにより嬉しかったですね。 

【これから断熱リノベーションを実施する方へのアドバイス】
私の仕事は、結露で困っている方々からの相談を受け、調査を行い、改善アドバイスを行っています。その中には、何処に相談しても改善できなかった結露相談を持ち掛けられる駆け込み寺的な存在にもなっています。一方、結露被害現場を通じて作り手へ「知識・意識・技術」を伝えていきながら安全な住宅造りのお手伝いも行ってい
ます。作り手・住まい手どちらの方にも言える事ですが、「安全に暮らせること」 ココが一番大事です。次いで「格好の良い家」・「暮らしやすい住宅」・「省エネな住宅」・「メンテの楽な住宅」を考えていただきたいと思います。弊社では様々な角度からお手伝い出来るよう尽力したいと考えています。


住まい環境プランニング合同会社