Architecture Student Contest 2024 日本大会結果発表

ASC2024

サンゴバン国際学生建築コンテスト日本大会結果発表

2024年4月20日(土)、東京日仏学院にてサンゴバン国際学生建築コンテストArchitecture Student Contest 日本大会が行われ、6大学7チームが発表を行い入賞作品3点が決定しました!

優勝チームは2024年6月フィンランドで行われる世界大会に日本代表として出場します。

Architecture Student Contestとは

創立350年のグローバル建材メーカーであるサンゴバングループは、“MAKING THE WORLD A BETTER HOME”という企業理念の元、建築・建設業界を担う未来の世代をグループ一丸となって支援しています。

Architecture Student Contest は全世界の学生を対象に2004年から始まり、今年で19回目の開催となります。各国からの学生が同じ課題で競い、国ごとに審査が行われます。各国の最優秀者には賞金に加え、世界大会への出場権が与えられます。

サンゴバン日本法人(マグ・イゾベール株式会社/サンゴバン・グラス・ジャパン株式会社)も賛同し、この度、初めてとなる日本大会を企画・開催いたしました。

コンテスト課題について

2024年はフィンランド・ヘルシンキ市にあるヘルシンキ大学の敷地をテーマに、モダンで持続可能な建築デザインのアイデアを学生の皆様から募集しました。

新築とリノベーションの2つのテーマについて、建築とサステナビリティの両側面から評価されます。

一般的な建築計画(コンセプト、マスタープラン、平面図等)に加えて、よりサステナブルな建材の選択、年間の冷暖房需要計算と建築物のライフサイクル分析(OneClickLCA)が必須となっている点が本コンテストの大きな特色です。

asc judging criteria 2024

審査委員総評・所感

審査委員長 若林亮

日建設計 デザインフェロー

単なる建築の提案ではなく、「環境」への提案を求めていることが、このコンテストの特徴。学生にとってハードルは高いものの、社会に出れば「環境」は我々に求められる大切なことであり、これを学ぶ良い機会であると共に、大きな意義があると感じました。
応募作品には、表現レベルの差や慣れないディテールの作図に苦労の跡が感じられたものの、どの作品にも取り組んだチームの熱量があり、これら提案にある一つ一つを漏らさず読み取ることに苦労はあったものの、自身にとってもプレゼン、公開審査、懇親会を通じて、とても楽しく、多くのことを学ぶことができました。このような機会を頂いたことに感謝申し上げます。

日建設計 若林亮氏

審査委員 掛上恭

住友林業株式会社 木材建材事業本部
ソリューション営業部 LCAチーム シニアマネージャー

国際的なサステナブル建築のハイレベルの要求に応えた提案が求められる難易度の高いコンテストでした。何となく環境に良いだろうというだけでなく、熱・音・光・空気・エネルギー・CO2まで定量的な評価と提案が求められ、少人数の学生チームが取り組むには困難が伴う課題だったと思います。どのチームも意欲的に課題に取り組み工夫を凝らした提案内容で、課題解決に関する濃淡はありましたが、学生達の思いが伝わってくる作品ばかりでした。審査員としては提案をしっかり理解して公平な評価をする必要があり、こちらもある意味審査されているような気がしておりました(汗)。公開審査を通じて再評価することで納得感のある審査になった点も良かったと思います。自身も学ぶことが多く、同時に楽しませていただきました。貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。

住友林業掛上氏

審査委員 柳瀬真紀

一般社団法人グリーンビルディングジャパン 共同代表理事

合同会社ウィリディスMEPエンジニアリング 代表社員

大変難しい要件の建築コンテストでしたが、想いと工夫と熱量に満ちた提案が非常に多く、公開審査でもそのことを強く感じることができました。気候危機や分断される世界でサステナビリティはますます重要性を増しています。若い世代の皆さんと一緒に同じ課題を考える機会を与えていただいたことに感謝するとともに、より良い世界を目指して皆さんと一緒に努力していきたいと思います。

柳瀬真紀氏

1位作品:Green Layers

京都大学大学院工学研究科建築学専攻  大橋 和貴
京都大学大学院工学研究科建築学専攻  加賀 大智
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 秋田 次郎

指導教員:京都大学大学院工学研究科建築学専攻 講師 小見山 陽介

講評(若林委員長)

単なる建築の提案だけでなく、環境側面への影響をも検証、検討しなければならない難しい課題。その中でこの提案「Green Layers」は、既存の植栽を守りながら人や街にとっての緑の役割を考え、またA棟ではRC躯体を軽量な木造に置き換えることで床面積を増やし、B棟では既存の基礎の上に新築を乗せながら、日照を考えたL字型の平面にまとめるなど、多くのアイデアと工夫がバランスよく、素敵なCGでわかりやすく表現されていた。
レジデンスのプランもよく練られている。A棟では貴重な冬の窓からの光を奥の部屋まで導くよう固定の間仕切りではなくカーテンなどで仕切る工夫や、よくよく見るとB棟1階の駐車場からは冬季の冷気の侵入や雪の中を歩かずとも良いよう、外を通らず車室ごとに設けた風除室を介して室内に入れる工夫がされている。
今の大学では、一つの分野の研究を深めるだけではなく、学際化として異分野の研究者が交流し、その中から生まれる新たな発想を大切にしている。その意味で、研究者とその家族、学生達が交流している姿が室内外のCGに描かれていれば、この街で新たに生まれる生活がより伝わったように思う。いずれにしてもこの素晴らしい作品が国際ステージで高く評価されることを期待している。
 

2位作品:Metabolism Hub

芝浦工業大学理工学研究科・建築学専攻 伊藤 貴哉
芝浦工業大学理工学研究科・建築学専攻 山口 星
芝浦工業大学理工学研究科・建築学専攻 渡邊 康太

指導教員:芝浦工業大学非常勤講師 山嵜 一也

講評(掛上委員)

新しい文化と古代の自然景観の共生の創造をテーマとし、新しい軸とハブにより建築・自然・文化を連結させた。新築・改修の双方にCLTグリッド構造を採用、部材を規格化し拡張性・可変性を付与し、建築環境を改善しつ魅力的なアクティビティを創出。シミュレーションにより課題を抽出し、雁行プラン・アトリウムにより日照・通風を最適化させ、緑化・雨水利用・廃熱利用等様々な提案を織り込み、デザインと機能を融合させた秀作である。
フィンランドで社会問題となる空家の解体によって発生する木質資材と地域の森林から供給されるバイオマス資源から住民自ら環境負荷の小さい木質資源を生み出し創作活動を行なう。サーキュラーエコノミーを具現化する提案はポイントが高い。
一方で、グリッドを利用して計画された居住スペースは細かく分割され、室内空間と外部空間との連続性が犠牲になり、インテリアはやや物足りない印象を持たれた。消費エネルギーの算定や各部位の性能値が示されなかった点は減点対象。エンボディドカーボンを削減しているが、地下車庫が考慮されていない点、柱梁の断面が大きい点など課題がみられた。あと一歩のところで二位となったが一位に匹敵する作品である。
 

3位作品: Re-hierarchize

東京工業大学大学院建築学系都市・環境学コース 濱田啓吾
芝浦工業大学大学院建築学部建築学科 岩田明紘
東京工業大学大学院環境社会理工学院建築学部 青島広樹

指導教員:東京工業大学 環境・社会理工学院 建築学系 都市・環境学コース准教授 淺輪 貴史

講評(柳瀬委員)

私たちは、人間が地球のすべてを支配しているように考えがちである。しかし、地球の46億年の歴史を振り返ってみれば、人間も動物も植物も水も雪も土壌も岩石もすべて平等かつ並列に存在する。各建物に各要素を並列に挿入し、ヒエラルキーの再構築を図るコンセプトはユニークで面白い。建築形態としてのフラスコのあり方については、スケールの検討を含め、もう少し工夫が必要だったように思う。
南側の豊かな自然とViikkiの既存街区をB棟経由でゆるやかにつなぎ、太陽光を享受するサンルームを介してB棟とA棟が視覚的につながる全体計画は、Viikkiの新たな美しいランドスケープになっていた。さらに、住戸の昼光利用に加えてフラスコやサンルームを利用した共用部の昼光利用と改善、サンルームやサウナの排熱利用、氷雪の潅水利用、地下駐車場の有無によるエンボディード・カーボンの検討など、地球の恵みを大切に活用する仕組みが多く盛り込まれていた。定量的な試算も記載されていたため、図表などを用いて視覚的にアピールすることができれば、さらに良い提案になったと思う。
今後も柔軟な発想で、積極的な提案を続けていただきたい。今後のご活躍に期待する。
 

応募作品一覧

The Unity Bridges

芝浦工業大学システム理工学部 環境システム学科 中西 大樹
芝浦工業大学システム理工学部 環境システム学科 田中 士温
芝浦工業大学システム理工学部 環境システム学科 新美 琢万

指導教員:芝浦工業大学システム理工学部 環境システム学科 教授 松下 希和

ASC2024 The Unity Bridges

審査講評(若林委員長)

A棟やB棟、ブリュワリーや日本庭園、博物館までを大きなリングのようなブリッジが結ぶ。ブリッジからは緑豊かな広場で生まれる様々な賑わいを見下ろすことができ、ウォーカブルな街への提案がとても楽しい。 

敷地北にある交差点からブリュワリーに抜けられるよう、B棟を二棟に分け。その間に設けた通りには傾斜させた窓面から反射光を導いている。ただ、これはマイナスをプラスにする工夫であり、そもそもこのマイナスをつくらない素直な配置ができれば尚良かった。 

また、2階のブリッジには、下水熱を使って融雪する工夫があり、冬でも心地よく歩けるブリッジは、地表の南北、東西の通りと交差するところ、建物を通り抜けるところにコミュニティが生まれる提案があれば、もっとブリッジの価値が高まったと思う。 

Duck Board

日本女子大学家政学部住居学科 武田 恵実
日本女子大学家政学部住居学科 増田り子 

指導教員:日本女子大学家政学部住居学科教授 宮 晶子

ASC2024 Duck Board

審査講評(若林委員長)

敷地北の交差点と南の博物館を結ぶ南北に長く配置したB棟。その足元は自然と開発エリアに間の境界を曖昧にするようピロティとして建物を浮かせて周囲の植生や生物の道をつなぎ、人はその環境を妨げぬようDuck Boardの上を歩く。この発想にとても好感を持った。 

ただ、B棟の各階、東西のレジデンスの間に設けたコモンスペースが大きく、結果、建物の東西の幅が大きくなり、その下のピロティが暗い空間になることが懸念された。コモンスペースとピロティの環境のバランスが取れればより良い案になったと思う。また、コンセプトをより強くするためには、A棟の足元もピロティに改修して同じ考えで提案することも考えられたかもしれない。 

表現ではコンセプトを表す手描きのスケッチがとても美しかった。自分の想いを手で描き、伝えることをこれからも大切にしてほしい。 

ECO-Forest

早稲田大学創造理工学部建築学科 權 才鉉
早稲田大学創造理工学部建築学科 王 辰
早稲田大学創造理工学部建築学科 吉田 希

指導教員:早稲田大学創造理工学部建築学科准教授 渡邊 大志

ASC2024 ECO Forest

審査講評(掛上委員)

丘のような建築形態、波のようなガラスと木の回廊、開放的なアトリウムなど印象的な空間を生み出した。眺望を操作して人を呼び込み公民館・商業施設等にぎわいを創出した点は好印象を持った。 

一方で居住空間の快適性(日照、プライバシーなど)が犠牲になり、A棟とB棟の間は分断された印象が持たれた。A棟とB棟の間には散策に適した親水空間が計画されているが、パース等で魅力を表現してもらえると良かったと思う。 

エンボディドカーボンを削減した半面、暖房負荷が基準値を超過しオペレーショナルカーボンを削減できておらず、両立できずに課題が残った。次の機会に活かしていただき、デザインと機能を融合させ、良質なサステナブル建築を生み出していって欲しい。

Diagonal Ring

早稲田大学創造理工学研究科建築学専攻 福本 英人
早稲田大学創造理工学研究科建築学専攻 安宅 祐介
早稲田大学創造理工学研究科建築学専攻 関 音葉

指導教員:早稲田大学大学院創造理工学研究科客員教授 萩原 剛

ASC2024 Diagonal RIng

審査講評(柳瀬委員)

つながりを強めるためのringと、貴重な太陽光を最大限享受するためのdiagonal gridを提案すべてに貫きとおした。diagonal gridによるプランニングはさぞかし難しかったと思う。その一方で、平面および断面に雁行配置を用いて、各所で日射取得、昼光や自然換気への工夫が組み込まれていた。太陽経路の動画や風のシミュレーションが提案されていたが、建物サイズに近いスケールで実施した方が建築形態の優位性を伝えやすかったのではないかと思う。 

敷地全体の鳥瞰イメージや建物のレンダリングは美しく印象的であった。このDiagonal Ringで学生や研究者が互いに交流しながら成長していく様子は、チームの皆さんの頭の中で思い描かれているはずである。次の機会では、ぜひそれを積極的にアピールいただきたい。